文藝同人誌の最前線 〜ブンガクの未来〜

文学に未来はあるか。
いま私が考えている大きな問いだ。未来とは何年くらい先をイメージするのか。
また文学の概念とは現在の「純文学」のことを指すのか。
そのような問いを自ら発しながらも疑問や答えに窮することは多々あるが、
今回から「文芸同人誌の最前線」と謳って、同人誌のなかで目についた作品をネット上でとりあげようと思う。


■ 第11回 2019年7月

  前回に続きよい読者になるにはどうしたらよいのか、を書く。
 「なんべんさびしくないと云つたとこで/またさびしくなるのはきまつてゐる/けれどもここはこれでいいのだ/すべてさびしさと悲傷とを焚いて/ひとは透明な軌道をすすむ」
 宮澤賢治の詩集『春と修羅』より「小岩井農場」のなかの有名な一節だ。この詩を読んで、どのように感じるだろうか。
 言葉に共振する読み手の思いこそ、読み書きの根拠である。
 よい読者になるためには、賢治の詩のように優れた作品を読み、自分の感性や読解力を磨くしかないのだ。それが書くことに繋がる。

 望月奈々「石人」(「mon」14号)は寓話であり、その喩が読者にどこまで伝わるかが勝負となる。カズオ・イシグロのような趣きのある作品となっている。
 同じく「mon」14号の島田菜穂子明日がくれば、さようなら。」で、構成を含め創作意図は理解できる。主人公に送られてきた謎めいたメールの意味を読者にもっと想像させる構造にすれば、おもしろいのではないか。
 阿部千絵「ブランコ」(「彩雲」12号)は短編で、女子高校生がいじめに遭う話だが、行間から救いを感じとることができる。比喩表現の個性もいき実力派の書き手だ。
 堀田明日香「リターン・トウ・エフェクト」(「じゅん文学」100号)は題名の意味する「行くよりも帰り道が早く感じる現象」を、人生の往還に喩えていて見事。ハッとする言葉もあり、五感感覚も鮮やかだ。

 【お知らせ】
 本欄は私が寄稿している全作家協会の「全作家」の「文芸時評」とは別である。同誌のコンセンプトはなるべく広く、をキーワードにしている。また本欄では特筆すべき何かを内包する作品を中心に少数精鋭で取り上げる。同人雑誌をお送りいただける方には、私どもの事務所に「お問い合わせフォーム」でコンタクトをとってほしい。掲載はご希望にそえないこともあるのでご了承いただきたい。


                                                           (了)

 

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