文藝同人誌の最前線 〜ブンガクの未来〜

文学に未来はあるか。
いま私が考えている大きな問いだ。未来とは何年くらい先をイメージするのか。
また文学の概念とは現在の「純文学」のことを指すのか。
そのような問いを自ら発しながらも疑問や答えに窮することは多々あるが、
今回から「文芸同人誌の最前線」と謳って、同人誌のなかで目についた作品をネット上でとりあげようと思う。


■ 第15回 2019年11月

 同人誌の高齢化がその進む。
 それは活字文化の衰退、ネット社会、反知性主義の影響もある。
 同人誌の打開を模索するならば、その方策を考えるのが主宰者や組織の指導者の役割である。それは停滞した企業活動など社会一般の常識だ。
 ゆえに高齢社会や活字文化衰退のなかで、どのように同人誌は活動し、文学のなかでの立ち位置を示すことが可能なのか。全国の主宰者の皆さんに考えていただきたいことだ。
 私は古い思考やメンツや「俺が俺が」の唯我独尊を排すことが大切だと考える。同人誌も人の集まりであり、文学素材になるような嫉妬や羨望、自尊心や虚栄心、劣等感の複雑な意識や人間模様などがあるだろう。だがそれを見越して活動しなければ同人誌は成り立たない。
 また別の考え方もある。
 同人誌はあくまでも書き手の「場」であり、組織の存続や継続は無理をせずに、書き手がいなくなったら解散する、との考え方だ。組織の存続を意図しないことである。
 私はそもそも文学とはひとりで歩むものだと考える。ひとりが一番強いし、誰とも徒党を組まないで遠くまで行こうと思う。
 そのような強い意思がなければ文学をはじめ芸術は創れない。
 さて最近読んだ同人誌作品の紹介である。

 木澤千「人を捨てた……」(「九州文學」47号)は、小さな町で福祉のケースワーカーとして就職した女性の話で、福祉の現場の実態がよくわかる。このように労働の現場を描く作品は少なく、説明文を省き描写文を多くすれば一段と飛躍する。今回の新潮新人賞は介護の現場を描いた女性の作品だった。
大西真紀「ジャングルまんだら」(「中部ペン」26号)は中部ペンクラブ文学賞の作品。南の島に旅行に出かけた女性4人が、シャングルの奥深くに迷い遭難する話。女性のキャラがそれぞれ立ち、冒険譚ではあるが筆力がある。「探し、発見する」構成は物語の原点であり読ませる。哲学性があるとさらによくなる。


 【お知らせ】
 本欄は私が寄稿している全作家協会の「全作家」の「文芸時評」とは別である。同誌のコンセンプトはなるべく広く、をキーワードにしている。また本欄では特筆すべき何かを内包する作品を中心に少数精鋭で取り上げる。同人雑誌をお送りいただける方には、私どもの事務所に「お問い合わせフォーム」でコンタクトをとってほしい。掲載はご希望にそえないこともあるのでご了承いただきたい。


                                                           (了)

 

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