文藝同人誌の最前線 〜ブンガクの未来〜

文学に未来はあるか。
いま私が考えている大きな問いだ。未来とは何年くらい先をイメージするのか。
また文学の概念とは現在の「純文学」のことを指すのか。
そのような問いを自ら発しながらも疑問や答えに窮することは多々あるが、
今回から「文芸同人誌の最前線」と謳って、同人誌のなかで目についた作品をネット上でとりあげようと思う。


■ 第20回 2020年4月

 読書会の開催を勧めたい。
 同人誌はみな合評会を開いているが、高齢化など同人雑誌の継続が難しいいま、昔のような合評会での厳しい相互批判の声はあまり聞かない。
 掲載前に原稿を持ち寄り討論する雑誌もあるが、これはすばらしいことだ。同人各氏の率直な意見を聞くことができるからだ。しかしそれもマイナスな面としては、メンバーが同じである同人各氏の文学姿勢により評価が偏る可能性があり、また新しい試みが削がれるかもしれない。
 私は古今東西の文学作品の読書会をお勧めしたい。長編は難しいと思うので中短編を中心にレポーターを決め発表し意見交換する場である。作品が現代文学ならばさらによい。最近の文学傾向がわかるし、批評家の評価が固定していないからである。

 先月読んだ同人誌からは以下のとおりだ。
 今回は信州文芸誌協会の「信州文藝」26号を紹介しよう。同協会は長野県の8誌が共同で発行している。「信州文学賞」を創設しその受賞作品を掲載。同賞は県内8誌から推薦のあった作品を選ぶ点に特徴がある。今回の受賞作は以下の二編。
 宮川集造「作家顔して東京へ」。所属同人誌は「層」。地方に住む同人誌の書き手の男が、ネットで知り合った男女と東京で顔を合わせる話。ネットを通して少しでも読者と接触したい、との期待と願望、一抹の不安がよく描かれている。謎めいた男女をさらにミステリアスに書くとよいかもしれない。
両作とも小説の素材はおしろいが、比喩や形容の点を磨く必要がある。心理の機微の描写も大切だ。あとは作者の人間観察眼が甘い物語にならないよう、作者が突き放して書くことが必要だ。文学とはスイートな物語ではないことを確認しておこう。
なお同人8誌とは上記の2誌のほか「蠍」「風」「顔」「科野作家」「構想」「窓」である。

 【お知らせ】
 本欄は私が寄稿している全作家協会の「全作家」の「文芸時評」とは別である。同誌のコンセンプトはなるべく広く、をキーワードにしている。また本欄では特筆すべき何かを内包する作品を中心に少数精鋭で取り上げる。同人雑誌をお送りいただける方には、私どもの事務所に「お問い合わせフォーム」でコンタクトをとってほしい。掲載はご希望にそえないこともあるのでご了承いただきたい。


                                                           (了)

 

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